民話で楽しむ「月の都」紀行 さらしなの親地名シナノの物語も 

 信州千曲市で受け継がれる民話を市内の史跡を訪ねながら聞いてもらう「月の都千曲民話紀行」を5月25日と26日の2日間行いました。民話の語り部活動に取り組む方々から実行委員の一人となることを要請され、1年間にわたって準備。千曲市に残る2つのブランド地名さらしな(更級)とシナノ(科野)、それぞれの里の歴史や地域文化、景観の魅力について、物語の力を借りて知ってもらいたいと企画しました。

 民話に関するイベントの実行委員というお話に最初は戸惑いましたが、日本遺産のタイトルである「月の都」という言葉にこだわりを持って地域活動をしてきたこともあり、お引き受けしました。とはいえ、「月の都」だけ強調すると、千曲川東岸域である旧埴科郡の科野の里の存在が薄くなります。古代科野の里の大王が眠る森将軍塚古墳では地元の民話「杏姫ものがたり」「はなとり地蔵」の朗読と一緒に、この古墳についての物語を創作し、その物語によって、シナノが「信濃の国」のはじまりの地名であることを知ってもらうチャンスだと思いました。「さらしな」という地名は、このシナノのシナから出来た地名なので、さらしなの親の名前も知ってもらうことになります。

 この企画への申込は、市外県外から約70人(市内も含めると計約80人)。バスの定員の関係で3グループに分け、初日の25日はまず森将軍塚古墳の頂上に(約490㍍)に上り、新作民話「シナノ」を聞いてもらいました(朗読は千曲朗読の会)。その後は、古墳時代の豪族に扮装した森将軍塚古墳館館長が、頂上から見える科野の里の歴史について語りました。朗読と説明の妙もあり、好評をいただき、物語をプリントした紙を参加者にお渡し、持ち帰ってもらいました。次をクリックすると、千曲朗読の会の朗読(約3分)がお聞きになれます。https://sarashina-r.com/wp2/wp-content/uploads/2025/05/シナノ.mp3 「シナノ」のテキストはこちらから。https://sarashina-r.com/wp2/wp-content/uploads/2025/05/シナノ★テキスト.pdf

 2日目は千曲川西岸域であるさらしなの里を巡りました。松尾芭蕉が立ち寄って俳句を詠んだ長楽寺で「姨捨山伝説」を、武水別神社神官松田邸では紙芝居「ばしょうさんとおばすて山の月」を地元の語り部の方たちが披露しました。

 2日間どのようなコースで千曲市を巡り、どんな民話を披露したかが分かるしおり(参加者に配布、A3二つ折りオールカラー)をアップしました。次をクリックすると、PDFでご覧になれます。https://sarashina-r.com/wp2/wp-content/uploads/2025/05/月の都千曲民話紀行★しおり.pdf

 今回の民話紀行の企画は、女性が中心になって進めました。女性の感性の豊かさと行動力、ネットワーク力には驚かされました。初日は戸倉上山田温泉のホテルに宿泊。夕食交流会では地元の朗読の「夕月の会」の女性たちが南京玉すだれを披露。その中で、さらしな姨捨の名月を代表する「鏡台山から上る満月」を形作ったのには感激しました。何度も笑わせられ、みなさんのユーモアに浸りました。また2日間の民話紀行を締めくくる企画は、姨捨山の異名を持つ冠着山(かむりきやま)のふもとの明徳寺での「箱膳体験」。箱膳は、中に食器を入れておき、食事の時はふたを返してお膳として使った日本の伝統的な食事道具で、食の大事さを生産から消費まで伝える活動をしている「かけはしの会」が、千曲市の「さらしな米」を主食に、千曲市産の野菜をたっぷり使った副菜(汁物、煮魚)などを昼食に提供しました。食べ終わったご飯茶碗には白湯が注がれました。たくわんで「い」「の」「ち」の字を書くと、洗わなくていいほどきれいになることも教えてもらいました。(大谷善邦)

 さらしなと科野という2つのブランド地名について詳しくは次をクリック。https://www.sarashinado.com/2019/06/22/shinano-sarashina/ 

月の都千曲民話紀行のスナップ写真(正村直樹さん、若林みき子さん、野本洋子さん撮影)と信毎記事 クリックで拡大

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