NHK大河ドラマ「光る君へ」最終回(2024年12月15日)で、「更級日記」作者の菅原孝標女(すがわらのたかすえ)の娘が紫式部と対面しました。源氏物語が後世に与えた大きな影響として、源氏物語が大好きで「更級日記」にもたっぷり感想を書いている菅原孝標の娘は最終回にふさわしいと思っていましたが、紫式部と直接対面という設定には驚きました。「二人が会った」のは史実になっているわけではないと思いますが、年の差は、親と子ぐらいの差なので、実際に会っていたとしても不思議ではありません。
最終回で、二人が対面するシーンは中盤。主人公まひろが(紫式部)が街中で、菅原孝標の娘が落とした源氏物語の本を拾ったことがきっかけで、菅原孝標の娘がまひろの家で物語をまひろに読んで聞かせる少女として登場しました。まひろは自分が作者であることは明らかにせず、登場人物や物語について菅原孝標の娘が熱心に披露する解釈を楽しそうに聞いていました。
菅原孝標の娘は源氏物語のオタク的な愛読者として描かれ、彼女の口から源氏物語が千年を越えて詠み継がれることになった理由も説明される仕掛けになっていました。理由は「男の欲望の実体と女性が自分を重ねられるさまざまな女性が描かれているから」というもので、最後に菅原孝標の娘が語った「光る君(光源氏)とは、女を照らす出す光りだったのです」という言葉に、千年後の現代に大河ドラマ化した理由も含まれている気がしました。
藤原道長が死んだ後は、長男の頼通が朝廷の最高権力者なりますが、頼通は父親に学んで、菅原孝標の娘を物語作家として宮中に招いた可能性があることが分かっています。研究者のそうした成果も踏まえ、源氏物語が後世に及ぼした大きな影響として、「更級日記」作者の菅原孝標の娘を抜擢したのだと推測します。 1時間に延長された最終回で、2人のからみは数分でしたが、このからみを描くためにも延長が必要だったのではと勝手に思いました。
藤原頼道と菅原孝標の娘の関係については、次をご覧ください。https://www.sarashinado.com/2012/01/02/title/
画像は、源氏物語をまひろ(紫式部、吉高由里子)に読んで聞かせる菅原孝標の娘(吉柳咲良)。番組のインスタグラムからです。(大谷善邦)