“やまと言葉のアンソロジー” 「月の都」のはじまりの歌も

 東京大学名誉教授(倫理学、日本思想史)で、さらしなルネサンス顧問をお引き受けいただいていた竹内整一さんの新刊「やまと言葉の人間学」が4月に、出版されました。「やまと言葉」とは、「もてなし」「いたわり」「やさしさ」「いのり」といった、古来日本人が普段の暮らしのなかで使ってきた平易な日本語のこと。これらを含む30余りの「やまと言葉」の成り立ちとその意味の変遷、深まりを探求することで、日本人の伝統的な精神性を浮き彫りにするものです。

 竹内さんがこれまでの数々の著作で明らかにしてきた「やまと言葉」を列挙して解説する格好になっており、“やまと言葉のアンソロジー”です。気になった「やまと言葉」があれば、そのたびにひも解くことができます。

 さらしなルネサンスでは10年前の2014年の発足集会で、古今和歌集に載る「わが心慰めかねつさらしなや姨捨山にてる月を見て」について、竹内さんに講演をお願いしました。この和歌が当地を「月の都」にする“はじまりの歌”だったからです。「やまと言葉の人間学」の中では、この和歌にある「なぐさめ」という言葉、さらにこの和歌がまとう「かなしみ」といった感情についても、解説があります。

 「さようなら」という日本人の別れの言葉についての考察は胸に残りました。「さようなら」は、「さようであるならば…」とこれまでのことを確認し、「死んだとしてもこの先、なんとかなるという思い」から生まれたものだそうです。戦国武将をはじめ多くの日本人が「辞世の歌」を詠んできた精神性も、竹内さんの考察から説明できるのではと思いました。

 竹内さんは昨年9月、急逝なさいました。亡くなる直前まで執筆を続けていた文章が収載されたものと思います。出版社はペリカン社。3300円(税込み)です。(大谷善邦)

 「わが心慰めかねつ」和歌についての竹内先生の講演は、次をクリックすると、読むことができます。

http://www.sarashinado.com/wp/wp-content/uploads/56d7a61cc9b085b5fc10d272345cbbcc.pdf

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