さらしなルネサンスは6月16日(木)、「稲荷山」「姨捨棚田」「戸倉上山田温泉」の3つの地域の魅力を語る出前授業を、屋代高校附属中1年生を対象に行いました(詳しくはここをクリック)。千曲市の魅力に関心を高めた生徒たちはその後も、個人やグループで研究を進めてきており、9月15日(木)には、現地を実際に訪ね、その風景や実物を観たり話を聴いたり、体験したりして学びを深くしました。さらしなルネサンスでは、地域の専門の方々のご協力をお願いし、生徒たちの現場学習を支援しました。
【稲荷山グループ】 〈講師〉宮坂 勝彦さん・山口 清史さん
稲荷山は、江戸時代は「一か月に何度も商品を販売する市が開かれ、家の数は500軒もあった」と記されるほどにぎわい、明治以降北信濃随一の商都に発展しました。現在も、旧街道に沿って近世の町割が残り、重厚な塗り篭めの商家や茅葺の家屋、裏通りの土蔵が建ち並ぶ街並みは、平成26年に国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されています。
宮坂さん、山口さんの案内で、商家の独特の外見や建物の中の様子を観察し、より具体的な説明を聴いて、熱心に見学していました。現在もしっかり保存されている街並みに、稲荷山の方々の誇りと熱意を感じたのではないでしょうか。さらに、宮坂さんの自宅でもある、昔料亭であった建物の中を見学したり、実際に木造の階段や廊下等を磨いたりする体験をしました。生徒は、黒光りする廊下や階段の床をじっくり見て・触れて、丁寧に磨く体験を通して、伝統を守る大切さと大変さを実感したようです
【棚田グループ】〈講師〉大谷善邦さん・塚田弘昭さん・野本洋子さん・金井実さん・塚原佐久子さん
塚原弘昭副会長の案内で、姨石に上がり、長野市まで見渡せるパノラマに、秋の棚田風景を楽しむとともに、6月の出前授業で学習した「姨捨の棚田は、地すべりによってできた」ことを確認しました。厳しい残暑の中ですが、黄金色の稲穂が実った棚田のあぜ道を歩くと、快い風が吹き抜け、秋の訪れを感じました。
姪石苑では、名月会の金井さんに棚田の稲づくりのお話を聴きながら、「月見荘」へと歩きました。今、豊かな実りを迎えた棚田は、金井さんをはじめ名月会の方々がご苦労されて守ってこられたことを感じ取ってくれたようです。月見荘では、野本さんの「姨捨伝説」の語りを全員で聴きました。よく知っている話ですが、塚原佐久子さんが奏でる琵琶の音色とともに、まさに「姨捨」の地で聴く「姨捨伝説」は、より深い味わいがあったと思います。
【戸倉上山田温泉グループ】〈講師〉小平悟朗さん・堀口鉄久さん・君島泰さん・荻原祥子さん・森義一郎さん・小野さん(荒砥城) 山崎さん(ステンドグラス)
「戸倉上山田温泉グループ」では、「荒砥城見学」「観光や集客等に積極的な取り組みを知る」「ステンドグラス体験」の3グループに分かれての学習でした。
3グループが共通して見学したのは、「上山田温泉資料館」です。資料館では、6月の出前授業でも講師だった、上山田温泉株式会社代表取締役である小平悟朗さんが案内してくださいました。温泉の歴史や源泉を守るために千曲川堤防を丈夫なものにしたこと、団体の観光客が多く芸者さんもたくさんいて一番にぎわった時代の様子など、貴重な写真や資料を示しながら話していただきました。資料館の一角に射的があり、実際に的を狙い倒すことができたので、生徒に大人気でした。
➀グループが見学した「荒砥城」は、戦国時代に村上氏の一族が築城したと言われ、川中島の戦いでも武田・上杉両軍が奪い合った戦略上重要な城でした。荒砥城に登った生徒たちは、眼下の千曲川及びその両岸遠くまで見渡せる美しい景色に、戦国時代に思いをはせたのではないでしょうか。
➂グループでは、色ガラス板を一枚一枚つなぎ合わせて小物やアクセサリーを作る「ステンドグラス」体験をしました。観光客に人気のスポットです。実際に自分で作品を作る楽しい体験ができました。
午後は、➀➂グループが一緒になり、上山田で飲食店を経営する森義一郎さんに、温泉街を案内していただきました。温泉を生かした病院として開院した国立長野病院の沿革や土産店など、温泉地ならではの場所を回って説明してもらいました。
➁グループは、「カラコロの湯」(足湯)において、人力車で温泉街を観光案内している堀口鉄久さんの話を聴いたり人力車体験をしたり、堀口さんの尺八演奏も聴きました。温泉街を盛り上げるため、ほぼボランティアで案内されていることを知り、観光客を増やすためのアイディアを考える生徒さんがいました。この間、半分のグループは君島園さんで、お茶ソムリエである君島泰さんからお茶について学び、おいしいお茶の入れ方を体験しました。お家で飲むお茶とはちょっと違ったようです。人力車体験とお茶の体験は、1時間ごとに交替しました。
➁グループの午後は、荻原館に行き、旅館の様々な部屋を見学したり、旅館業について女将の荻原祥子さんにお話を伺ったりしました。興味津々の生徒さんが多く、旅館業の大変さや生きがいなどについて質問したり、女将さんの特技まで披露していただいたり、大変盛り上がりました。
この1日の中で観たり聴いたり体験したりしたこと、また、翌日の上山田ホテルで「光明国民学校児童たちの学童疎開」について学んだことは、生徒にとって、学校では学ぶことができない貴重な学習ができたのではないかと思います。このことが、皆さんの未来に、少しでも役立ってくれれば幸いと思います。
私たち、さらしなルネサンスの会員も、附属中の皆さんと一緒に歩いたり体験したりすることを通して、改めて地域の「すばらしさ」に気づいたり、今までと違う見方や考え方をしたりすることができました。私たちも、新たな「千曲市の宝」を探すことができたように思います。 (文責 児玉淳子)