9月10日は、「中秋の名月」でした。
日中はよく晴れ、夜7時を過ぎる頃に、雲の合間より美しい満月、まさに「中秋の名月」が見られました。
そして、まだまだ続くコロナ禍の中ですが、万全の対策をして、姨捨の日本遺産センターや長楽寺・棚田を主な舞台とした3年ぶりの観月祭が開催され、さまざまな企画が実施されました。その中で、講師等を務めた大谷会長、塚原副会長、宮坂副会長、中村理事はじめ、さらしなルネサンス会員が各所で観月祭を盛り上げました。
〈午前の部〉「さらしなおばすて歴史と文学講座」 10:30~12:00 於 長楽寺
年間3回の文学講座シリーズ第2回 宮坂副会長が事務局長を務める「さらしな・おばすて全国俳句大会事務局」が主催です。
9月11日当HPに既に記載していますが、大谷善邦会長が長楽寺面影塚にある芭蕉の「俤や 姨ひとりなく 月の友」の俳句の読み解きについて話しました。「ひとりなく」の解釈が、従来の「一人で泣いている」だけでなく、芭蕉はこの句に「姨」と「今は亡き母親」の面影を重ねて思う気持ちを込めていたのではないかとの話です。芭蕉が、「更科紀行」の旅に出る前に、母を亡くしていること、最初のこの句は漢字を使って「ひとり泣く」としていたそうですが、何回かの推敲をして「ひとりなく」とひらがなに変えていること等を根拠とする芭蕉への母への思いについて詳しく説明していただきました。
遠い昔、330年前にこの地を訪れ、美しい月を眺めた芭蕉。その心に浮かんだものは何だったのか、さらに深く考えたいものです。
〈午後の部〉「ブラ田守 ~姨捨棚田の探索散策~」13:30~15:00 長楽寺周辺から姨捨駅・棚田の散策
「さらしなおばすて歴史と文学講座」と同様、「さらしな・おばすて全国俳句大会事務局」が主催です。
棚田の魅力と晴天の天、そして、NHKの人気番組を思わせるネーミングに惹かれた参加者が予想以上に集まり、40人を超える集団となりました。そこで、楽知会の協力を得て、健脚コースとゆっくりコースに分かれ、長楽寺周辺から姨捨駅まで坂道を上り、駅近くの棚田から棚田のあぜ道を下るコースを歩きました。講師は、信州大学名誉教授・明徳寺の住職である塚原弘昭副会長です。
ごつごつした姨岩に登ったり、坂道途中に表れている地層を見たり、姨捨駅から眼下の長野方面まで広がる地形を眺めたりする中で、三峰山の爆発等による地滑りによって広い斜面ができ、昔の人々が大池から水を引くという大変な努力等によって、この棚田ができたことを、塚原さんからお話いただきました。そして、千曲川対岸の東の山々とは明らかに違う地形を眺めながら、まさに奇跡的にできたこの棚田を、大切に守っていかなければならないこと、改めて感じました。ネーミングの通り、まさに「田守」です。
残暑の日差しは厳しいのですが、コスモスが揺れ、トンボが飛ぶ初秋の棚田。早くも、稲刈りが始まっていました。
17:30~19:30 於 長楽寺
「満月ライブ」と言えば、日本の代表的ギタリストであり、姨捨長楽寺を愛してやまない吉川忠英さんのギターと歌の演奏です。
忠英さん登場の前に、恒例の、わが更級の誇る棚田バンドの演奏です。棚田バンドには、当会の理事である中村洋一さんがいます。棚田バンドの素朴で温かな演奏と軽妙なМCは、観客をリラックスさせるとともに、一緒にメロディを口ずさむなど演奏をゆっくりと心から楽しむための不可欠な存在です。そして、いよいよ忠英さんの登場となります。
忠英さんの素晴らしいギターの調べと深く豊かな歌声は、美しい満月をも誘っていただいたようで、ライブの後半に、丸く大きな満月が雲の間から顔を出してくれました。棚田バンドとのコラボ曲「棚田姫」から、最後のホーミーを交えた「草原の音」までの、心に沁みる素晴らしい演奏は、長楽寺の境内から棚田全体にも深く静かに響き渡っていきました。
このほか、夜は、夜市が日本遺産センター駐車場で行われ、「さらしな姨捨 『月の都』」は、しばし賑わいを取り戻しました。長楽寺や棚田のライトアップも美しく、お月さまも笑顔で見守ってくれていたのではないかと思います。
(文責 児玉淳子)