10月21,22日に開かれた「さらしなの里そば祭り」での講演会「さらしなそばの魅力」です。演者は栃木県足利市で蕎遊庵というそば店を経営し、そばの実の真ん中の白いさらしな粉だけのそばを作る名人の根本忠明さんです。根本さんは毎年、さらしな粉十割でそばを作る技術を磨くコンテストを開催している方です。
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根本さんによると、昔さらしなそばは、そばの実を殻ごと石挽きし、その粉をより細かい目の篩(ふるい)でふるった白い粉で打っていました。殻ごとなので真っ白にはならず乳白色で、星のような小さな細かな殻も入っていました。現在のような純白のさらしな粉の開発に成功したのは明治30年代といわれ、東京の麻布永坂の「布屋更科」と中野坂上の「吉野家」(現石森製粉)によって開発されたそうです。そばの実の芯の、ほぼでんぷん質だけでできている部分だけを砕いた粉で、そばの実は芯の部分から皮へ近づくにつれて、たんぱく質へと主要成分が変化するそうです。
根本さんがさらしなそばの研究をするきっかけの一つになったのが、ある年配の方の言葉です。その方は「さらしなそばは空腹感がいい。舌触り、歯ざわり、のどごし、それはさわやかを与えてくれて、なおかつ夜の食事のときはおなかがすく。これはほかの食べ物にはない」と言ったそうです。根本さんは「これはお年をめさなければわからないことだが、素晴らしいことだと思って、このことが自分のさらしなそばの中にある」と語りました。
純白の良いさらしな粉を作るのは大変難しく、でんぷん質はたんぱく質のような粘りがないので打つのも難しいそうです。だからさらしなそばを毎日、お客さんに提供していくことも大変難しいことと根本さんは言います。根本さんはそのうえで、さらしなの里に対して、さらしなの白さを利用して千曲市の自然の食べ物との掛け合わせ、季節の自然の産物を打ち込んだ「変わりそば」というの手もあるのではと提案しました。白いさらしなそばだけでなく、白いさらしな粉を使うからこそ、その地域の自然も生きてくるという発想です。
根本さんは自身のお店で提供している変わりそばをを紹介しました。春は桜。塩漬けにした花びらを打ち込みます。山椒を打ち込んだ「木の芽切り」もあります。これは真っ白のさらしなにぽつぽつとヒスイ色の葉がちらちらと入るので、全体に透明感があり、楽しいそばだそうです。
夏はシソの葉を入れた「大葉切り」。暑くて食が進まない時期にぴったり。秋は「菊切り」。紫や黄色の菊の花を打ち込み、その色と香りを楽しんでもらうそうです。冬は「ゆず切り」。緑色や黄色の色とゆずの香りを楽しむものです。
さらしな粉には甘みとうまみがあります。その甘みとうまみを生かしていけるのが変わりそば。さらしなの里はアンズが名産であるので、アンズも入れたらどうかと根本さんは提案しました。
★根本さんは昨年のそば祭りにも参加。さらしな粉十割で打ったさらしなそばを、かつおだしのつゆで食べる食べ方を紹介してくださいました。詳しくは次をクリックしてご覧ください。https://sarashina-r.com/rekishi/sarashinasobamaturi/