「さらしなの里千曲」みんなで言い続けようー清水愼一先生講演会

 千曲市の観光アドバイザー、清水愼一先生による講演会「千曲市の観光はこうして蘇る」が4月29日、千曲市総合観光会館で開かれました。清水先生は「科野さらしなの里 千曲」という千曲市の新しい観光ビジョンの策定をリードした方。さらしなルネサンスが、さらしなの里ガイド冊子「美しさらしな」の発行記念講演としてお願いしました。

 清水先生が一番強調したのは、「その地域にしかない言葉を使わないと観光客は来ない」。その言葉は「歴史・伝統文化」にあり、千曲市の場合は「都人があこがれた、1000年以上の歴史がある『さらしなの里』」ということでした。

 そこにしかない言葉で表現して成功している例として清水先生が挙げたのが金沢市と仙台市。両市はそれぞれ「加賀百万石」「杜の都」という「そこにしかない歴史伝統文化」の言葉を頭につけて、今ではだれもがそうしたまちだと知っています。

 金沢は駅前にどこにでもありがちな立派な駅ビルを建てるのではなく、歴史伝統文化を踏まえた大きな鼓門をつくり、そこから歩いていくと市場があり兼六園があるという導線を構築、観光客に歩いて街を楽しんでもらう仕掛けをつくりました。それによってお金がたくさん落ちます。こうした仕掛けができたのも「加賀百万石」というキャッチコピーを作り、そのイメージを崩さないようみんなで守ってきた結果だそうです。

 仙台の「杜の都」は、伊達藩が築いた「森の都」が太平洋戦争の空襲で破壊された後の戦後、市民がみんなで植樹を始めたことがきっかけ。今も毎年市民全員が1本ずつ木を植える取り組みが行われ、大きくなった木の下ではいろいろな楽しいイベントも行われています。仙台駅前を整備するときは、市長が「森づくりはわれわれの誇りだ」として、駅前広場を木で覆ってほしい」と言ったそうです。

 こうした両市の取り組みは、ぶれなかったからブランドイメージとなったのですが、千曲市の場合は、その言葉が「まさに『さらしな』」だと清水先生は指摘しました。「都人があこがれたさらしな。そこに戻るべき。1000年以上にわたってあこがれられた歴史のあること自体がすごい」 

 清水先生は「科野さらしなの里千曲」という新しい観光ビジョンをどれだけ市民に浸透させられるかが重要だと言います。金沢や仙台のようにイメージを目に見える形に具体化できるかは、市民がさらしなの歴史文化を学び、自分の言葉で説明できるようになることが何より大事だとも言いました。「たとえば戸倉上山田温泉の隣になぜ佐良志奈神社があるのか。旅館など観光関係者が特に勉強してほしい」

 そうした取り組みを続けていると、結果的に外国人も来るそうです。「外国人の日本への旅行の目的はもう買い物ではなくなっている。日本の文化の体験です」

 観光客は「歴史・伝統文化にこだわらないともう来ない時代」だそうです。そしてそのためには「地域全体の雰囲気」が重要だそうです。「個々の人ががんばるだけではだめ。千曲市にはさらしなの里があるとみんなで言い続ける。浸透させるにはポスターやパンフレットには必ず観光ビジョンを入れる

 講演会には用意した座席では足りず、追加して70人以上の方においでいただきました。

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