「月の都」のはじまりの歌があります。平安時代初期の「古今和歌集」に載る「わが心慰めかねつさらしな姨捨山にてる月を見て」という歌です。この歌の読み解きの第一人者である東京大学名誉教授(倫理学、日本思想史)の竹内整一さん(須坂市出身)が9月30日、急逝されました。
当会は10年前の「月の都千年文化・再発見の里づくり」をスローガンにしたキックオフ集会で、竹内さんに「わが心慰めかねつ」の歌をテーマに基調講演をしてもらって以来のおつきあい。千曲市日本遺産推進協議会では、「わが心慰めかねつ」の歌の碑を数年後に建設することを決めたので、竹内先生に、さらにこの歌を掘り下げる講演と受講者との対話をお願いし、お引き受けいただいたところでした。まだまだたくさんの質問をしたかったのに、残念です。竹内さんにはずっと当会の顧問をお願いしていました。
キックオフ集会での竹内さんの講演タイトルは「さらしな姨捨の月が誘(いざな)うもの」。「わが心慰めかねつ」の歌が、平安時代以降、文芸の分野に限らず歴史に名を残すたくさんの偉人たちの心を引き付けてきた理由を明らかにするお話で、この講演内容が当会の活動の柱となり、月の都ガイド冊子「The MOON CITY」の発行にもつながりました。
講演は、当会のHPで読むことができます。次をクリックしてください。
更旅240・なぜ美しい月にも慰められないのか
また、この講演の内容は、著書「やまと言葉で〈日本〉を思想する」(春秋社)にも一章を使って掲載されています。竹内さんの別の著書「『かなしみ』の哲学 日本精神史の源をさぐる」(NHK出版)を読むと、「さらしな姨捨」に寄せられてきた日本人の精神性に深く触れることができます。(大谷善邦)