千曲市の歴史文化を市学芸員が紹介 今年度は旧更級郡域を中心に

 さらしなの里歴史資料館(千曲市羽尾)で9月10日、千曲市歴史文化財センター主催の千曲市歴史講座第1回がありました。市の新しい文化財保存活用地域計画が全国で先駆けて国に認められたことで、国の支援が結構期待できることになり、市民にも関心を高めてもらうための開催。学芸員がそれぞれの専門知識をもとに解説する連続講座は同センターとしても初めての独自企画だそうです。

 1回目は、稲玉修治・同センター所長が、まず新しい計画の内容と日本遺産「月の都」について説明しました。千曲市の歴史文化財をめぐる全体状況を知ってもらうためです。

 詳しい計画の内容は、ここをクリックして市のホームページをごらんください。この計画でいちばん評価できると感じたのは、冠着山(かむりきやま)と更級の里をそれぞれ保存活用対象の柱として明確に位置付けたことです。姨捨山の別名を持つ冠着山には自然だけでなく修験道といった信仰・歴史文化があります。そのふもとに広がる更級の里には姨捨山の歴史を刻む石碑や月の句碑など文化財級のものがいくつもある郷嶺山(ごうれいやま)があります。千曲市のシンボルともいえる冠着山の資料収集や保存活用に着手することは、千曲市の魅力を県内外に発信する有力な施策になるので、国の支援を受け早急にとりかかってほしいと要望しました。

 稲玉所長は、自治体の研究をしている団体から「月の都」についての寄稿を依頼され、執筆したとして「新日本遺産『月の都 千曲』と『姨捨考』」というタイトルの文章を披露しました。その冒頭「はじめに」で書き出している一文に、稲玉所長の認識の確かさを感じました(赤字は大谷善邦が着色)。

 千曲市の西に「更級(さらしな)Jという地区がある。古来名高い名月の里の地名を今に伝える地だ。この里からの月の眺めは道行く旅人の目に留まり、京の都に伝えられ人々の耳目を集めた。そうした歴史的な経緯を経て、千曲市は2020年6月、日本遺産「月の都千曲』の認定を得た。名称(タイトル)を「月の都千曲』とし『嬢捨の棚田がつくる摩詞不思議な月景色『回毎の月』』という副題がつく。……(後略)

 この論考の最後では、京都の東山区にかつてあった「新更科」という地名のことにも触れています。「新更科」については更級への旅203号http://www.sarashinado.com/2013/07/28/203shinsarashina/で紹介しましたが、新更科が京都に存在することを最初にキャッチしたのは当時、観光課職員だった稲玉所長です。稲玉所長の「月の都」に関する論考は、冒頭の画像をクリックすると、読むことができます。

 稲玉所長はまた、千曲市の特産である「あんずの特徴と栽培の歴史」についても話しました。千曲市森のお住まいで、あんず農家だそうです。

 今年度の千曲市歴史講座は来年2023年3月まで計7回。かつての更級郡域の歴史文化を紹介するのですが、解説する学芸員全員の顔写真とプロフィールを載せた資料も配布されました。画像をクリックすると、7回の講座それぞれのテーマと合わせご覧になれます。こうした情報があると、講座が身近になります。いい試みだと思いました。(大谷善邦)

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