さらしなの方言を出前授業に 手作りかるたを楽しみながら 更級小4年生

 さらしなルネサンス理事の野本洋子さんとお仲間の方々が5日、さらしなの里で使われてきた方言の出前授業を、手作りかるたを楽しみながら更級小学校で行いました。方言は実際に語らないとその魅力が伝わらないと考えてきた野本さんは、かるたにすれば読み手も取り手も方言を口にすると気づきました。去年の春ごろから、聞いて口にして面白い方言を50選び出し、かるた用の無地の箱や札を購入し、プリンターで印刷。「さらしな方言かるた」をすべて手づくりしました。

 このかるたの特徴は、取り札には絵ではなく、方言が大きく書かれていることです。出前授業を受けた4年生は、机を教室から外に運び出し、6つのグループに分かれて、床に座り、野本さんの読み上げる方言(読み札)を聞き、並べた方言札を取り合いました。最初子どもたちは、方言の意味よりも取ることに熱心でしたが、野本さんが方言の意味を説明していくうちに、方言の言い回しやリズム、しらべにも関心が出てきました。担任の先生も面白い言い回しの方言に大きな声で反応したり、自ら口にしたりしてくれるおかげで、子どもたちの反応もどんどん熱くなっていきます。

 「おちょべ たれても なんにもでねよ―おちょべってどういう意味ですか?」。子どもたちは分かりません。「えぼつって およはんたべねで ねちまった」。「えぼつるの意味は?」と聞くと、ある子が「ふてくされる」と答えました。祖父母と同居している子には最初に手を挙げてもらったのですが、半数以上がそうだったので、いくつかは耳にしている感じではありました。

 50の札の読み上げが終わった後、かるたのどの方言が一番好きか言ってもらいました。ある子は「まてーにたべなきゃばちあたるど」。残さずに食べないと…という意味です。この子は学校の給食を残しがちなようです。別の子は「おめさんは どっから おいんなしたね」。ほかに「おしっこ まってくるから まってろや」「ごむせえ ざぶとんだが おすわんなして」「せんどなは ふんとにありがとごわした」などがありました。

 最後に子どもたちから感想をもらいました。「さらしなは方言が少ないと思ってたけど、かるたやってみたらいっぱいあって、全部覚えるのに何日もかかる」「いい方言があってよかった」

 授業後、片づけをしている野本さんたちのところに、女の子がやってきて「(自分は)あばなが一番好き」と言いました。「あばな」は「あばな またあした あそばずな」の初句、バイバイの意味です。人懐っこい子で、教室を出るときは「あばな」と言って手を振って別れました。この子は「おうちに帰ったら、家族に気に入った方言を披露してください」という野本さんの呼びかけに反応したようです。子どもたちはそれぞれどんなお気に入りの方言フレーズを持ち帰ったか。

 数人の子どもから「さらしな方言かるた」の実物が欲しいと言われました。販売はしていないのですが、地元住民団体の親睦機関誌「さらしなの里友の会だより」46号に、50の全取り札を掲載しています。ここをクリックすると、PDFが現れ、印刷もできます。

 野本さんは千曲市社会福祉協議会からも「さらしな方言かるた」を使った介護や介護予防の協力を要請されており、7月15日には介護現場のリーダー役の人たちによるこのかるたの活用講習会があるそうです。(大谷善邦)

 

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